サラヴァレーベルの面々。



はっきり言って俺は怠けてると思う。性根入れ替えろ。



サラヴァの内部に入って経営したものとして、裏話には事欠かない。アーティストにはいつも驚かされる。5年から7年かけて育てて電気代から家賃、食費、身の上相談、自殺の相談、挙句の果てに我らが家に住み込むなどして面倒を見て、レコードを作っていって、やっと有名になると大手レーベルと契約して、挨拶の一言もなしに消えていく連中をたくさん見てきた。

一方では礼を尽くしていく連中もいる。数は少ないが、彼らの人格を尊敬する。

人を愛さず芸を愛せ、とはよく言われる言葉だ、アーティストは概して、人間社会でうまくコミュニケーションが取れないから、音楽やアートで表現するのである。人間としてかなりのクズが多い。いや、言い方が悪い、彼らのすべての愛と情熱は作品に込められてしまっているから、人間性にはカスしか残っていないのだ。だが、彼らの作品に一番近いところで触れてこられただけでも、苦労は報われていると思う。

ピエールがいつもスタジオに入る前のアーティストに言う言葉がある。「何日かかってもいい、人がどう思うかは気にするな、ただ自分のやりたいことを全て出し切ってくれ。10年後に聞いても恥ずかしくないものを作ってくれ」と。企業としてやっていけないのは当然だ。

なぜなら彼にとって大切なことはひとつだけ――「誰だってギターを弾きたければ、2時間もやればひとつくらい歌の伴奏ができるだろう、その時の楽しさだけが大切なのだ。それ以外に意味はまったくないんだよ。みんなプロと比べてみて自分はダメだと思ったり、まわりの人にバカにされてやめてしまう。でも自分の得た喜びだけを灯りにして進んでいけば、道に迷うことはない。それが君の人生の唯一の道しるべなのだから」。

商品になっている音楽ではない音楽、売れないけれど面白いものを細々と作っているレーベルは、まだまだたくさんある。売れ線なんかじゃなくても、自分の好きな音楽をやっているアーティストは世界中にたくさんいる。売れないからと言ってくじけることはない。結果重視なんて商売の世界の言葉だから。喜び重視のほうが本物である。そんな連中に少しでも勇気を与えられたらと思い、50年目の展覧会を開いたのだった。